佐藤友哉『デンデラ』(新潮社)レビュー

デンデラ

デンデラ



 作者の代表作は、『1000の小説とバッグベアード』ではなくて、『灰色のダイエットコカコーラ』であると思っていますが、ふたたび、代表作というに足る力作を物した。此岸と彼岸の中間に位置するコミューンの騒乱は、まさに俗世が自ら棄却したものたちにふたたび直面するまでの、水面下でのカオスを描いているようだ。作者は、“社会”の構造をダイナミックに捉えると同時に、コミューン住人たちの信条/心情の差異化によって、“世界”のありようも小説に取り込もうとしている。野心は持ち続けるべきです。