獅子宮敏彦『神国崩壊―探偵府と四つの綺譚』(原書房)レビュー

本日のエピグラフ

 「おそらく、広大な水が苦手、海が恐いという弱みを見せてしまったことで、それを払拭するために、また奇蹟の力を見せ付けようとしたのでしょう。(…)」(「第二部 帝国擾乱」P276より)

神国崩壊―探偵府と四つの綺譚 (ミステリー・リーグ)

神国崩壊―探偵府と四つの綺譚 (ミステリー・リーグ)


 
ミステリアス10
クロバット10
サスペンス
アレゴリカル
インプレッション10
トータル47


 いやー奇想のてんこ盛り、第二部の「マテンドーラの戦い」だけで、もう昇天だ、ワタクシ的には。“歴史”への想像力と、“謎”への幻視力が、止揚されて、「綺譚」としてしか括れない“物語”が産み出される。たしかに探偵小説は「奇蹟」を現実に還元してしまう破壊力を持つのだから、正史=聖史には採用されんわなあ、と今更ながら思い入ってしまう次第。