今野敏『凍土の密約』(文藝春秋)レビュー

凍土の密約

凍土の密約



 近年高い評判をとっている作者の警察小説には、正直いって違和感があり、どうにもその小説世界にのめり込めないでいたけれども、本作は一気読み。なによりも、自らの弱さをしっかりと認識しているカタブツのカッコよさがツボ。物語は、ロシア人スパイをめぐって起きる連続殺人の捜査行に、思いもかけぬ過去の亡霊が姿をあらわすクライマックスまで、二転三転する展開に、そのディテールのリアリティが、サスペンスを否応なしに高める。