辻村深月『ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ』(講談社)レビュー

ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。 (100周年書き下ろし)

ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。 (100周年書き下ろし)



 母と娘の相克という斉藤環的主題を、知ってか知らずか、みごとに具現化した。桐野夏生『グロテスク』とはまた違った方向で、現在をめぐる困難を浮き彫りにする。作者の筆は濃やかで、物語の着地する地点が、新たな物語の始点になりそうな気がするが、ともあれ、作者の新境地というよりかは、新たな作風への移行期の作品と見るべきではないかと思う。