北森鴻『暁英  贋説・鹿鳴館』(徳間書店)レビュー

暁英 贋説・鹿鳴館

暁英 贋説・鹿鳴館



 絶筆未完の作品が、まさしく読者への挑戦になった。作者の目論見は、半ばまで読み取れる、はず。異文化の人為的注入が、“自然”に復讐されるということだろう。『蜻蛉始末』『暁の密使 』と同様、日本の“近代”という時代の混沌から浮かび沈めるものらを、物語に結晶させる試みが、本作でもきっちりなされているが、この方向性が今後の作者の一方の柱になったことは疑いを得ない。無念。