勢古浩爾『ビジネス書大バカ事典』(三五館)レビュー

ビジネス書大バカ事典

ビジネス書大バカ事典



 世に言う「ビジネス書」をペラペラとめくってみて、ああマトモな読書人層はかかわってはイケナイ世界なのだなあ、と思ったことがある。著者は、「ビジネス書」を読まなかった理由として、「自分がやっている仕事、会社の業種や業態はそれぞれ独特なもの」であり、一般的なビジネス理論は「そのままでは通用するわけがない」と思ったことを挙げている。こういう人が、この出版企画にかかわって、「ビジネス書」の目くるめく世界に足を踏み入れたら、そのいちいちをツッコんでるだけでも、分量の多いものになるだろうわなあ、と思うわけで。この「ビジネス書」というカテゴリーが発生したのは、一体いつぞやと思われる向きは、パオロ・マッツァリーノさんの『続・反社会学講座』(ちくま文庫)を是非ひもといて下さい。「ビジネス書」が80年代カルチャーの落とし子らしきことが、なんとなく分かります。――で、本書は近年における「ビジネス書」作家珍獣図鑑という体がありますが(だから中谷彰宏が出てこない・笑)、たぶん三つ子の魂百までということなんでしょうねえ、出版社や編集者が。著者は常識人のツッコミ力をフル回転してぶん、ボケ担当の「ビジネス書」作家たちと漫才をしている感じになっていますが(「やかましいわ」)、こんなヒトが、新人社員に素手で便所掃除させる経営者を持ち上げちゃうんだもんね。立志伝中のキャラの強烈さには敵わないか。