横山秀夫『臨場 スペシャルブック 』(光文社文庫)レビュー

本日のエピグラフ

 「パニックはただ頭ん中が真っ白になるわけじゃねえ。一瞬にして膨大な情報や感情が脳内を駆け巡るってことだ。だから瞬時にすべてが見えちまうこともある。今日、明日、明後日、先々。食べる。生きる。(…)」(「未来の花」P173より)

臨場 スペシャルブック (光文社文庫)

臨場 スペシャルブック (光文社文庫)



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トータル41


ドラマは全く見てません。テレビをほとんど見ないので。でも、未収録作品四作のみで、十二分にモトは取れる。名作「罪つくり」に比肩する「未来の花」のなかの一文、上に掲げたこの言葉のもつ剔抉の深さと強さ。人生の突然の切断に「臨場」した者の有する迫真性に、現代本格の“論理”はよく拮抗しうるか。それが、鋭い逆説を提示しているのなら、なおさら。