伊坂幸太郎『マリアビートル』(角川書店)レビュー

マリアビートル

マリアビートル



 タイトルにこめられた意味は、物語のクライマックスで示唆される。新幹線内で繰り広げられる殺しあいのロンドは、滑稽さとある種の虚しさが、スリルとサスペンスに味付けられて綴られるが、作者がアンチカタルシスをある程度目指したのかな、と思えなくもない。『バイバイ、ブラックバード』で、ファン向けの仕事をきっちりやりながら、こういうものを書くところに、作者の小説家としての膂力はある。