薬丸岳『刑事のまなざし』(講談社)レビュー

刑事のまなざし

刑事のまなざし



 一人娘を暴漢に襲われた過去を持つ元法務技官の刑事が主人公の連作。前半三編が推理小説年鑑に収録されたことだけあって、総体的に読み応えのある短編集で、最終話でカタルシスは得られるのだけれども、やや一本調子のきらいがある。モラリティの露出が物語の膂力になってはいるが、小説自体の持ち重りに寄与しているかどうかは、ちょっと留保。