高井忍『柳生十兵衛秘剣考』(創元推理文庫)レビュー

本日のエピグラフ

 「無体、大いにけっこう。戈を止めると書いて武と説く――そんなたぐいの詭弁は俺の性に合わないんでね。武士の本分は太刀打ちの働き、それ一つだ」(「兵法無手勝流」p.50)

柳生十兵衛秘剣考 (創元推理文庫)

柳生十兵衛秘剣考 (創元推理文庫)



ミステリアス
クロバット
サスペンス
アレゴリカル
インプレッション10
トータル45


 快作。クライマックスに剣戟を持ってくる結構は初回で捨て、傑物譚のなかで本格ミステリとしての完成度を模索していった感がある。最終話で、サプライズが見事に決まった。時代ミステリというより、歴史ミステリと呼ぶべきでは。