大沢在昌『絆回廊 新宿鮫X 』(光文社)レビュー

絆回廊 新宿鮫?

絆回廊 新宿鮫?



 シリーズ開始から二十余年。記念すべき第十作で、ターニングポイントを迎える。たぶん、現在の人間の慕情と交歓、そして鎮魂の想念を的確に捉えることにおいて、作者の右に出るものはいないだろう。過去から現在へと貫通する暴力と因果のネットワークに翻弄され続ける秩序の番人たちの哀歌とアウトローたちの屍は、また絶えることなくセキュリティ社会の周縁を縁取っていく。