安萬純一『ガラスのターゲット』(東京創元社)レビュー

本日のエピグラフ

 「(…)それはともかく、タヌキの生態というのも謎に包まれている。これほど人間の生活圏に近いところで生きているのに、その暮らしぶりはほとんど判っていない。(…)」(p.263)

ガラスのターゲット

ガラスのターゲット



ミステリアス10
クロバット
サスペンス
アレゴリカル
インプレッション
トータル44


 鮎川賞受賞後第一作は力作で、連続大量殺人というコンセプトで、論理のアクロバットを堪能させてくれるけれども、着地がスマートだったかどうか。この物語の設定だと、真犯人の肖像をもっと描き出さないと、説得力が減じると思う。犯人のモノローグの断章を、効果的にもっと配置してほしかった。