皆川博子『開かせていただき光栄です』(早川書房)レビュー



 歴史ミステリの巨匠が今回挑んだのは、解剖学黎明期の猟奇殺人の一顛末。18世紀ロンドンの都市的混沌と頽廃の空気を描出しつつ、物語を輻輳させて、終わりよければ的な大団円で幕を引く、流麗な筆致と心憎い技巧をひたすら味わう。