長沢樹『消失グラデーション』(角川書店)レビュー

本日のエピグラフ

 (…)後悔。大きすぎる後悔。人の心の機微がわからない。距離感がつかめない。中学、高校と本気で人と向き合ってこなかったツケがこれだ。(…)(p.83)

消失グラデーション

消失グラデーション



ミステリアス
クロバット
サスペンス
アレゴリカル
インプレッション
トータル40


 本年の横溝賞受賞作は、選考委員のなかで唯一本作に否定的だった坂東真砂子の選評がネタバレだったせいか、巻末選評が割愛され、代わりにカバー表紙折り返しに坂東以外の選考委員の絶賛評が刷り込まれているけれども、むしろ坂東評に読み心がくすぐられたなあ。で、実際読んでみて、小説のギミックを成立させまた糊塗するために、ナラティブが精緻化されすぎて、かえってやや鼻白むか。淡い感動はあるけれども。