森晶麿『黒猫の遊歩あるいは美学講義』(早川書房)レビュー

黒猫の遊歩あるいは美学講義

黒猫の遊歩あるいは美学講義


ミステリアス
クロバット
サスペンス
アレゴリカル
インプレッション
トータル39


 収録作六編は、後半に行くにしたがって、本格度は増してくる。ペダントリーの前フリと日常の謎のワンセットだけれども、定型性の反復は、「講義」の内容と論理のアクロバットの小気味よさで、退屈しない。クリスティー賞の初回としての持ち重りはある。個人的には、“日常の謎”系の作品には、教養小説的要素のほかに、精神分析的アプローチが、サイコ系のものより異様な意味を帯びてくるのを再確認。