三津田信三『生霊の如き重るもの』(講談社ノベルス)レビュー

本日のエピグラフ

 「あいつは日本の各地方に伝わる怪異譚の蒐集を生き甲斐にしている奴で、(…)その話の全てを相手が喋り切ってしまうまで、絶対に諦めずに取り憑き続けるという悪癖を持つ、何とも恐ろしい奴なんだよ」(「顔無の如き攫うもの」p.311)

生霊の如き重るもの (講談社ノベルス)

生霊の如き重るもの (講談社ノベルス)



ミステリアス10
クロバット10
サスペンス
アレゴリカル
インプレッション10
トータル48


 刀城言耶の学生時代の探偵譚。各話持ち重りがしっかりとある。奸計にまつわる逆説的論理の異様さが、悪意をカリカチュアしたものに感じられ、妙な生々しさを、説話的な怪異譚の欠片が不気味に浄化している印象がある。ともあれ、阿武隈川先輩が強烈にキャラ立ちするのを寿ぐ。