2012年6月版



 今月の三冊は全部五ツ星。『骨の刻印』は、スペシャリスト的アプローチから閉鎖状況下のサスペンスに移っていく手際のよさと、共同体の暗部の滲み出し方が物語のテンションをさげていないのがいい。『暴行』は、ハイスミス読者にはたまらないだろう。人生の交錯が、ただ雨粒が流れていくようなやるせなさしか感じ取れないが、作者は運命というのを自然現象と等位的なものととらえているようだ。『フランク』は、表題作とチェスを扱った二編と酒場の賭けの話がお気に入り。「<天真爛漫>計画」って、原著ではどういう英語だったのかしらん。


★★★★★…………面白い!
★★★★…………読み応えあり。
★★★…………一応、満足。


骨の刻印 (ヴィレッジブックス F ヘ 5-2)

骨の刻印 (ヴィレッジブックス F ヘ 5-2)

★★★★★


フランクを始末するには (創元推理文庫)

フランクを始末するには (創元推理文庫)

★★★★★


暴行 (新潮文庫)

暴行 (新潮文庫)

★★★★★