高野史緒『カラマーゾフの妹』(講談社)レビュー

カラマーゾフの妹

カラマーゾフの妹



今年の乱歩賞は、風格で勝ち取った感じ。名作の続編パロディだけれども、19世紀末の革命前夜の“人間”たちの不穏な蠢動を、意外な装置をも導入して、シニカルに捌いて、本家の小説空間の引力圏から、軽々と逃れる。来るべき疎外される理性の時代の予兆を、逆説的に“無意識”に篭めていると見た。