逢坂剛『バックストリート』(毎日新聞社)レビュー

バックストリート

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 お懐かしや岡坂神策シリーズ最新作。分厚いけれども、快速で一気読みできる。作者の教養を見せつけられながらも、小説の内実は、ナチス・ドイツの裏面史が絡む大風呂敷の展開のスリルとサスペンスで満たされる。落ち着いた語り口が、悪の戯画性を巧みに抉り取って、私立探偵小説の芳醇さを味わった気分。