竹吉優輔『襲名犯』(講談社)レビュー

襲名犯

襲名犯



 何年か前に、某誌の評論家座談会で、出席者のひとりが、乱歩賞の常連投稿者がついに受賞したことに対して、受賞してもらわないとあとがつかえる、というような揶揄をしていたけれども、こんな状況で、昨年のように、いってみれば天才肌の作品がいきなり栄誉をかっさらっていくというような事象があるのは、なんというか、ある意味で停滞局面から脱け出せないということなのだろう。本年の乱歩賞受賞作は、サイコパスを扱っていながらも、思ったより(作者の想定しているより?)派手派手しい印象はない。小説のセンスは確実にあることは確かだが、要は、乱歩賞という器自体に、新鮮味がないので、それにこの作品が引きずられている、といったところである。