芦辺拓『時の審廷』(講談社)レビュー

時の審廷

時の審廷



 作者のトリックメーカーとしての意識と鋭利な社会批判が交合した作品は、『時』シリーズ前二作のほかにもあるけれども、本作は、社会派というよりも歴史ミステリーという枠組みに当てはめたほうが、しっくりくる。歴史の“出来事”をつないで、より大掛かりな歴史的悪意を、探偵小説という舞台上で炙り出している感じ。快作にして怪作。