芦辺拓『少女探偵は帝都を駆ける』(講談社ノベルス)レビュー

本日のエピグラフ

 ジャズに映画、ラジオ、地下鉄、レビューその他もろもろに彩られた幸福な時代。(…)そこではあらゆることがいっぺんに起こっていた。(「名探偵エノケン氏」P8より)

少女探偵は帝都を駆ける (講談社ノベルス)

少女探偵は帝都を駆ける (講談社ノベルス)


 
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 本当に、こういうものはこの作者しか書けないんだろうなあ、と実感。博識というだけでなくて、大衆文化のアモルファスな質の捉えよう、というか、大文字の“政治”性でさえ、一風景として呑み込んでしまうような消費社会に対するシンパシーとでもいったらよいか、たぶん作者の“物語”に対する信頼って、ここのところが原基的なところだと思うのだけれども。「78回転の密室」は名品、「テレヴィジョンは見た」は怪作であります。