樋口有介『金魚鉢の夏』(新潮社)レビュー

金魚鉢の夏

金魚鉢の夏



 なんともユーウツでちょいダウナーな気分にさせられる、作者の描いた近未来日本。小説の上手いひとが、日本社会の袋小路を書かざるを得ない動機は、もひとつ把握しづらいけれども、現在の日本の“気分”を結晶化させた世界ではある。エコノミーの暴力性に、淡々と屈しているようなリアリズムは、不思議なニュアンスをまた醸し出しているが。