近藤史恵『私の命はあなたの命より軽い』(講談社)レビュー

私の命はあなたの命より軽い

私の命はあなたの命より軽い



 ストレートな心理サスペンス、というわけではない。ドメスティック・スリラーとも、一線を画すだろう。性的、社会的、感情的な“家族”なるものの関係性の集積を、縒り分けて剔抉した感がある。単なる家庭の悲劇というテーマを突き抜けて、親密圏の空虚と蹉跌を描いて、怜悧な印象がある。