角岡伸彦 西岡研介 ほか 『百田尚樹『殉愛』の真実 』 (宝島社)レビュー

百田尚樹『殉愛』の真実

百田尚樹『殉愛』の真実



 読んだ読んだ。まあ、近年稀に見るスキャンダル・ノンフィクションだろうね。ムラカミやセカチューを超えて戦後最大のベストセラーを放った元NHK経営委員の売文屋が、後妻業を地で行く女にほだされ、彼女のアリバイ本を出すかたわら、女と一緒に遺贈放棄の交渉に臨み、一方で文春・新潮に圧力をかけて疑惑記事を封殺、自らの権威を思う存分振りかざして、出版ジャーナリズムに対して恣に振る舞った。いわば、その逆襲本だが、出版・テレビなどのマスメディアを舞台に、カネと利権と欲望のロンドを、余すことなく描き出した、とでも言ったらいいか。この本のヒロイン(?)であるSは、まあそういうヒトなんだろーな、と、実は察しがついていたが、百田のSの虚言劇に係わっていくモチベーションが、今一つ把握できない。ワタシは百田の昏い欲望の方に興味があるぞ。いずれにせよ、続編を期待する。