叛乱のクロニクル

 直木賞作家の船戸与一さん 死去
 NHK 4月22日 15時17分


「砂のクロニクル」や「虹の谷の五月」などの冒険小説で知られる直木賞作家の船戸与一さんが22日未明、胸腺がんのため都内の病院で亡くなりました。71歳でした。

船戸さんは山口県下関市出身で、早稲田大学に在学中、探検部に所属してアラスカなど世界各地を巡りました。
大学卒業後は出版社の勤務を経て、フリーのルポライターとなり、昭和54年に「非合法員」で小説家としてデビューしました。
その後、「山猫の夏」や「砂のクロニクル」など、海外を巡った経験を基にした冒険小説を次々と発表します。
また平成12年には、フィリピンのセブ島を舞台に、日本人を父に持つ少年が元人民軍のゲリラとの出会いなどを通じて成長していく様子を描いた「虹の谷の五月」で直木賞を受賞しました。
さらに最近は、戦前の旧満州を舞台にした歴史小説満州国演義」の執筆を続けていて、ことし2月に完結編となる9巻を出版したばかりでした。


 「満州国演義」に関するインタビューが先日の読売新聞に掲載されていたが、そこでの近影は、いかにも枯れたような風情だった。
 私は、冒険小説プロパーではないので、外野からの見解になるけれども、船戸の小説に投影されたラディカリズムは、例えばニーチェ的な求道的ニヒリズムの対極にあるかたち、行動主義と“歴史”のダイナミックな相互干渉、その連鎖に、主体の場所を見出す、いわば投企性の欲望化ということだろう。作者の問題意識が、“歴史”そのものにシフトする過程で、ベンヤミン的な“暴力”の位相が露骨に出てきたのは、興味深いものがあった。