岡本裕一朗『フランス現代思想史 - 構造主義からデリダ以後へ 』 (中公新書) レビュー



 中公新書フランクフルターの来歴を閲したと思ったら、今度はフランスの「現代思想」。ツカミはやはりソーカル事件だが、そもそも『「知」の欺瞞』が告発されねばならなかったのは、「現代思想」の幻惑がアメリカにまで波及して席巻したのが背景にある。がその一昔前、80年代にポンニチにもポストモダニズム思潮が隆盛を極めた頃には、フランスの方では、「現代思想」はすっかり退潮していた。「六八年五月」の叛乱を、「現代思想」家たちは通過せざるを得なかったが、結果的にマルクス主義のモードへと回収されていく。90年代に入って、デリダが独自の「正義」論を打ち立て、ポンニチのポストモダニストたちもそれに引きずられて(無節操に転向して?)いったのは周知の通りだが、著者は「現代思想」の「メディア論的転回」を示唆して筆を擱くが、ニーチェフーコーの「系譜学」の転覆的カタルシスを得られることができるだろうか。