深緑野分『戦場のコックたち』(東京創元社)レビュー

戦場のコックたち

戦場のコックたち



 今年のベストテンで高評価を得た力作で、連作短編系ミステリーの袋小路を、全面的に暴力性が覆う世界に埋め込むことで、この系統を賦活させるような印象がある。戦争という場で交錯する人間(反人間)ドラマを、謎解きをテコにして巧く捌いて、相応の持ち重りがあるが、やや冗長に感じられるのは、それだけ作者がディテールに配慮したということだろうか。