辻真先『たかが殺人じゃないか (昭和24年の推理小説)』(東京創元社)レビュー


たかが殺人じゃないか (昭和24年の推理小説)

たかが殺人じゃないか (昭和24年の推理小説)

  • 作者:辻 真先
  • 発売日: 2020/05/29
  • メディア: 単行本

 まさに時代の生き証人たる作者の、若々しさというか老成を拒否したような、筆致と結構を持つ本格ミステリの快作。厳めしい重厚感から逃れても、時代の跛行する様相を点描して、濃密な時代の空気感を漂わせる。作者の筆の標的は、権威主義者の抑圧的な無節操さであることが、今更ながらわかるなあ。