篠田節子『ブラックボックス』(朝日新聞出版)レビュー

ブラックボックス

ブラックボックス



 「ブラックボックス」というのは、即ちザ・システムということでもある。ハイテクファームと下層労働者の詰めるサラダ工場、食という製品の生産システムの虚無の帰趨をサスペンスフルに描く。作者の、社会を俯瞰してそこから近未来の混沌を喚起するマクロ的視座と、疎外労働者、疎外消費者の様々な呻吟、システムに対する疑心暗鬼を濃やかにフォローするしなやかな視線が、自然に一体となっているのは、風格ですよね。システムに対する叛乱は、手探りでやっていくしかない、というのが取りあえずの結論か。