浅羽通明『時間ループ物語論』(洋泉社)レビュー

時間ループ物語論

時間ループ物語論



 一読、たぶん現在における保守側の批評の最も洗練されたもののひとつに数えられ上げるだろう、と思った。「時間ループ」という原型から、現代(近代)におけるモラトリアムタイムの問題性が導かれるのは自然なこととして、それをいかに説得的に、成熟というモラルに結び付けていくか、この手続きは、教養主義的濃やかさが担保されて、少なくともリーダーズクラスには訴求していくだろう。現在の成熟をめぐる問題性について、哲学的訴求においては、内田樹の独壇場であるけれども、“教養”的アプローチでは、著者は長山靖生とタメを張ってもらいたい。