大澤真幸『生権力の思想 事件から読み解く現代社会の転換』(ちくま新書)レビュー

生権力の思想―事件から読み解く現代社会の転換 (ちくま新書)

生権力の思想―事件から読み解く現代社会の転換 (ちくま新書)



 著者の3・11後のリアクションには、かなり失望したので、その著作からしばらく遠ざかっていて、本書も、このシレっとしたタイトルで、危うくスルーするところだった。本書は、久々に著者の現在的状況の分析の手際を見られて、興奮しました。フーコーの生権力論が措定した規律訓練型の権力の失効を指摘したドゥルーズは、「管理型」という新たな権力様態の台頭を論じた。この管理型権力は、生権力(論)内部の変化を原因として、規律訓練型の終焉の後に生起したものだ。この生権力(論)内部の変化を定位するのが、本書の主題である。規律訓練型と管理型の最大の差異は、前者が内発的に自己反省的に「主体的」に権力に服従するのに対して、後者は被服従者の「主体」性を要しない、ということだ。「生権力」=「臣民の生命や健康をこそ第一義的な配慮の対象とする権力」は、どうして「主体=臣民」の「主体=臣民」性を要求しなくなったのか? それは、本編で。いつもの大澤社会学のキーワードが出てきますよん。