筒井康隆『聖痕』(新潮社)レビュー

聖痕

聖痕



 要するに、去勢小説なワケです。日本の現代史と主人公を重ね合わせる意図は露骨だけれども、3・11から逆算して、ゆるやかな終末的観想を湛えたような印象を演出するのに、作者らしいスノビズムが全面的に行使されていて、やっぱり意地がワルいのではないかなあ、と。