芦沢央『許されようとは思いません』(新潮社)レビュー

許されようとは思いません

許されようとは思いません



 今年のベストテンで高評価を得た短編集。出てすぐ読んだから、てっきりもう取り上げたもんだと思っていたが、まだだった。表題作をはじめ、逆説と切れ味が鮮烈な作品群だが、読了後、急に印象が褪せる。作者の持ち味である濃やかな関係性の描出が、逆説性の持つ異化効果を、相殺する方向に働いている感触があり、心理小説的演出の厚みが作者にとって筆を悩ますことになるかも。