島田荘司・監修『本格ミステリー・ワールド』(南雲堂)レビュー

本格ミステリー・ワールド〈2007〉

本格ミステリー・ワールド〈2007〉


 一連の「X論争」のことを、“サロン”と“実践”の違いかななんてホザいたワタクシめからすると、本書は“実践”派からの<本格>ベスト・オルタナティヴであるわけです。選定された「黄金の本格ミステリー」(初年は奇しくもゴールデンダズンでした)の解説を実作者本人にやらせたのはマルですね。あと、座談会を除けば、やっぱりユルいっすよ、本作りが。まあ、おそらく時間がなかったのだろうし、もしかしたら執筆者も確保できなかったのかもしれない。しかし、だからこそ企画をもっと練らなくちゃです。アンチを突きつけているものと、同じような誌面構成をしてちゃしょーがないでしょう。<本格>のコアの部分を示し続ける作業は必要だと思うけれど、それが先行のものの便乗商法と見られちゃ哀しいです。と思いつつも、「<本格>のコア」の部分についての批評的アプローチを充実させると、実は「あれも<本格>これも<本格>」というスタンスに半必然的に近づいてしまう(ワタクシめは基本的にはこっちですけれども)。つまりは、「黄金の本格ミステリー」の選定作業って、“商売”になるのぉーっちゅうミもフタもない結論になってしまうわけであって…………かなり気合入れんとさあ。まあ、本来だったら、雑誌の一企画であるのが適当で、それが何年か溜まったら本にするってのが正しいあり方だと思うんだけれども。とりあえず、これからやるべきなのは、過去に遡って、その年ごとの「黄金の本格ミステリー」を選定することで、これでとりあえず何冊かは出せると思うけれども。