養老孟司 内田樹『逆立ち日本論』(新潮選書)レビュー

逆立ち日本論 (新潮選書)

逆立ち日本論 (新潮選書)


 
 「二人の風狂」による「“高級”漫才」。ふたりとも“逆説”の大家だけれども、養老が狷介で、内田が陽気、という差異がある。どちらもボケ役、じゃあなくて「つっこまれ役」的な空気を醸し出していると思うのだけれども、言っていることが正論で、かつ“対話”が成立しているので、なんとなく妙な心持になっているときに、どちらかがツボを突いた発言をして、思わず吹き出してしまう。例えば、養老の脳談義を受けて内田が発した締めのひとこと(P23)。的確な比喩なのに、なぜ笑ってしまうのか。と考えて、そうか、“間”を外しているんだ、と思い至った。話の緩急が“常識”のセンとは微妙にズレている。ズレた“間”からは、まさに「逆立ち日本」が見えてくる、みたいな。とすると、この“対話”においては、私たちとは異なる“時‐間”が流れていたのかしらん。“時間”という意識は“民族”性の基底にあるものだけれども、養老‐内田の間に流れる“時間”のほうが、もともと“日本人”性を規定するものだった、のかなあ。