倉阪鬼一郎『留美のために』(原書房)レビュー

留美のために (ミステリー・リーグ)

留美のために (ミステリー・リーグ)


 
ミステリアス8 
クロバット8 
サスペンス6 
アレゴリカル7 
インプレッション8 
トータル37  


 作中人物のほぼすべてが合点してるのに、読者(のオレ)だけ気付かない、というシチュエーションは、いざ解決編が示されると、そんなフクザツなことが作中人物間の暗黙のガテン事項として成立するんかい、と悔し紛れの茶々を入れたくなるのですが、この作品の場合は、こちとら気持ちよくアタシが一本取られました、とシャッポを脱ぐことができましたです、とヘンな具合に感心したお話なのですが、やっぱりヘンなホメかたではある。ともあれ、作中の同人小説に見られる“言葉”づかい、というか字面を眺めているだけで、もううっとりです。やっぱりこういうことできるのは、作者ぐらいしかいないのだろうなあ。連城三紀彦とはまた違った意味で“美文”であるということなんだけれども。――やっぱりヘンなホメかたではある。