- 作者: 佐々木譲
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2007/09/26
- メディア: 単行本
- 購入: 5人 クリック: 22回
- この商品を含むブログ (86件) を見る
近年の日本ミステリ界は、まさに警察小説ルネッサンスというべき状況ですね。わが国において“警察小説”にイノベーションを与えたのは大沢在昌、高村薫、横山秀夫などだけれども、周知のように、最近の作者の“警察小説”に対するコミットの仕方も只事ではない。本作は、作者も含めて、現在“警察小説”が書かれるそのモチベーションというか、“警察小説”を通して<作者>たちが何を透視しようとしているのか、その意識のありかたが、そのまま結晶化したような作品である。タイトルからしてある種の情念を感じさせるものだが、本編はむしろ筆致には一定の抑制が感じられる。ある警官一家の三代記で語られるものは、あらゆる“悪”のショーケースでもある。“正義”とは、むしろ、そこからの分泌物のごときもののようで、親たちの“警官”としての道程を辿るのは、“矜持”というものが、一体どこから汲み出されるのか、“警官”が「白と黒、どっちでもない境目の上に立っている」存在であればなおのこと、この問いは通奏低音として全編を通して流れる。