米澤穂信『遠まわりする雛』(角川書店)レビュー

本日のエピグラフ

 「それで、答えられる目処はたっているのか」/(中略)/「もう少しなんだ、もう少し……。言葉にならないだけなんだ」(「手作りチョコレート事件」P298より)

遠まわりする雛

遠まわりする雛


 
ミステリアス8 
クロバット8 
サスペンス
アレゴリカル
インプレッション9 
トータル40  


 “現在”という時代を生きるのに、宿命とすらいえる、シニシズムアイロニズム。これは、現代的なニヒリズムの発現形態でもある。これが壊される契機に「ボーイ・ミーツ・ガール」の雛型を持ってくるわけだけれども、このシリーズをそういう方向に持ってくるのは、作者の余裕の表れかしらん、それとも当初からのプラン? ともあれ、ミステリとしての結構をオーソドックスに立ち上げながら、青春小説の手触りを不自然でなく感得させてくれる好短編集。