石持浅海『君の望む死に方』(祥伝社ノン・ノベル)レビュー

本日のエピグラフ

 「わたしは、梶間さんが殺しにくい環境を作りました。けれど、あくまで環境だけです。(…)」(P240より)

君の望む死に方 (ノン・ノベル)

君の望む死に方 (ノン・ノベル)


 
ミステリアス
クロバット10
サスペンス
アレゴリカル10
インプレッション10
トータル47


 「殺人」にいたるアフォーダンスをめぐる闘争。それにしても、こんなことを思いつくなんて、ね。この作者が、現在の本格シーンにおいて、一歩先んじた位置にいるのは、確かなようだ。エピローグは、ヘーゲルの主人と奴隷の弁証法を倒錯させた感があるけれども、“主人”の役割に固執した男のモノローグが、果たして妄念であるのかないのか、即ち“探偵”と“犯人”のどちらが闘争に勝ったのか、という点にも、物語の未決性は求められるべきだろう。