西澤保彦『スナッチ』(光文社)レビュー

スナッチ

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 「盗まれた」のは街ではなく、人格の方。寄生物ものを、記憶喪失テーマに接近させてみたワケで、設定を小説としてきっちり消化=昇華させているのが、ベテランの力量を示す。物語が佳境に入ってからのサスペンスもなかなかのもの。『収穫祭』で、母子テーマにケリをつけたのか、最近の作者の関心が“家族”の構成的側面に移っているのが印象深く。