内田樹『昭和のエートス』(バジリコ)レビュー

昭和のエートス

昭和のエートス


 
 今回のはブログ本でなく、各紙誌に発表されたエッセーを集めたもの(でも、ブログのエントリーと重複しているネタもありますが)。時論集だけれども、冒頭の「私的昭和人論」と掉尾を飾る「アルジェリアの影」は、著者のすぐれた批評的意識が結晶化されたものである。どのエッセーも独特の“逆説”とイヤミの切れ味は顕在だけれども、ことに「教育」に関する見解は、経済学的統制に対する批判もさることながら、著者の「共同体」論とも通底する認識がある――そしてこれは、いわゆる“学びの共同体”論とは、一線を画すものだ。あと、「ロスジェネ」的なるものに対する懸念も、実に真っ当。軽薄なウヨクに対しての当てつけ「日本属国論」には、ニヤリ。そうそう、“近代”の超克よりも、「日本」の超克だよね。