一ノ宮美成, グループK21『橋下「大阪改革」の正体』(講談社) レビュー

橋下「大阪改革」の正体

橋下「大阪改革」の正体



 関西のウラ利権を追及してやまないジャーナリストが、橋下府政のウラの裏を告発する。大阪府財政破綻のでっち上げを端緒に、それに基づく緊縮財政による社会福祉切り捨て、一方で財界、同和団体など既得権益層への露骨な擦り寄りと、それに付和雷同する在阪メディアなど、大阪構造改革の暴走を赤裸々にするが、いやーそれにしても、このひとって、本当にただ政治家になりたかっただけのヒトだったんですねえ。そうでなきゃ、選挙公約をはじめ、過去の言動をクルクル変える言動の説明がつかない。ケッサクなのは、選挙運動中、「全国学力テストで大阪が45位だったのを悲観していない」と演説した(いわゆるPISAショックについても、G8中ベストテンに入ったのは日本とカナダだけ、あとの国はもっと下で気にすることはないと、大正論を堂々と述べた)にもかかわらず、知事就任後、学力テストの市町村別結果の公開に露骨な圧力をかけるようになる。ノックとウワバミのあとに、このひとありってところなんでしょうか。なんだか、財政再建を柱とするコーカイを掲げて地方の首長になったあとに国政に進出する(おそらく、そうでしょ)ってのが、電波芸者プレステージになったんでしょうか。*1 

*1:ただ、本書を読むときは、著者が革新系の人間である、ということに要注意。所々に革新系的妄想が垂れ流されている。最もたるのは、道州制の導入が改憲とワンセットとして語られているということ。「道州制」と「改憲」の間には、何の論理的連関もない。ただ、改憲論者が「道州制」を主張しているという事実をもって、その逆張りのストーリーを紡いでいるだけである。現行の都道府県制を守るのが護憲に繋がるのかどうか、考えてみれば、この馬鹿馬鹿しさがわかるだろう。こういうことをやっているから、保守扇動屋に票を取られるんでしょうが。