新津きよみ『星の見える家』(光文社文庫)レビュー

星の見える家 (光文社文庫)

星の見える家 (光文社文庫)



 主に心理サスペンス調の作品を集めたもの。冒頭「危険なペア」と最後の「セカンド・オピニオン」は普通小説だけれども、前者は等身大の女性たちへの応援歌、後者は定番テーマの料理の仕方の冴えを味わうべきもの。この両者に挟まれたもののうちで、特筆すべきは表題作よりも「再来」で、アイデンティティー探究の不気味さと空虚さをアイロニカルに描いた名品。