倉阪鬼一郎『遠い旋律、草原の光』(早川書房)レビュー

遠い旋律、草原の光 (ハヤカワ・ミステリワールド)

遠い旋律、草原の光 (ハヤカワ・ミステリワールド)



 堂々たる書きっぷりに満足です。音楽と絵画、ふたつの芸術におけるアウラを文章へと定着させる手腕を味わうべき。暗号解読は、奪われた言葉の復元を通じての恋愛劇のカタルシスを準備する。作者の幻想味あふれる文体が、物語をアナクロニズムから救っていると思う。