中町信さん逝去



 徳間文庫版『高校野球殺人事件』解説(結城信孝)より

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「本格という言葉の意味を、意外に知らない人が多いんですね。これは出版社サイドに問題があって、本格推理のジャンルに入らない作品を本格物扱いにしたり、またその逆があったりで、あいまいになっています。(…)」
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 ミステリー作家の中には、本格物と決めつけられることを嫌う人もいて、単なるトリック主体の作品と見られては困るからだろう。
「ぼくの場合は、どこから見ても本格物なんだから、本の帯にハッキリと<本格推理>と書いてほしいですね」

 
 中町信さんは、『幻影城』ムーブメントとは一線を画す“本格”ものの書き手として、貴重な存在だったように思います。最初期の作品が創元推理文庫から改題のうえリバイバルされ、最後の作品も東京創元社から上梓されたのは、本当によかった。九十年代から講談社ノベルズでも中町作品が刊行されていますが、これで、現在の“本格”シーンに合流、その名前が若い人たちにも知られるようになったのは、喜ばしいことでしょう。
 ご冥福をお祈りいたします。