相沢沙呼『午前零時のサンドリヨン』(東京創元社)レビュー

午前零時のサンドリヨン

午前零時のサンドリヨン


 
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 いつの間にか、本年度最大の問題作になったような感じが。選評で笠井潔が示した懸念に当てはまる小説は少なくなく、だからあえて批判する側に回ったと思うけれども、問題はやはりネタかベタかということではないか。作者がこの小説世界をそのまま信じきっているのか、それともこの小説で描かれている世界は一切信じていないが、この小説世界に感じ入る読者がいることは確信できる、と思っているのか。私は後者だと思うが、この場合も単なるアイロニーなのか、モラリッシュな意識があるのかで、批評の態様も変わってくる。作者の次回作は、いったいどんな戦略をとってくるのか、という意味で楽しみ。