- 作者: 島田荘司
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2010/06
- メディア: 単行本
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諸説の死角を突いて、逆説というより正調かつシンプルなロジックで、寛政年間に立ち現れた幻の正体を解き明かし、作者ならではの作劇法で、それを逼塞する徳川鎖国体制に一瞬咲いた徒花として、また“時代”に対する痛烈な反逆の精神のありようを問うたものとして描いた、歴史ディテクティブの枠組みに収まらない、会心の一作。「後記」でも述べられているように、この小説自体未完の体裁が強いが、それでも作者の思い切った説明の省略、即ち、本編で示された数々の謎を、蔦屋重三郎が主人公の江戸編の物語に一気に収斂させる戦略は、この稀代のストーリーテラーの膂力が未だ衰えていないことを示してあまりある。