奥泉光『シューマンの指』(講談社)レビュー

シューマンの指 (100周年書き下ろし)

シューマンの指 (100周年書き下ろし)



 音楽にはもーまったく疎いワタクシめには、作者がある種の観念的手触りを、言葉に置換していく技術を堪能するのみでございましたが、それでも愉しめました。作中に響く「音楽」は、果たして何処から産みだされたものなのか。そもそも、“現実”の「音楽」なのか、言葉で表象されただけの「音楽」なのか。「音」のみが“現実”なのか、それを介した精神の交歓が、そうなのか。