斉藤貴男『消費税のカラクリ』(講談社現代新書)

消費税のカラクリ (講談社現代新書)

消費税のカラクリ (講談社現代新書)



 サラリーマン税制批判の急先鋒だった著者の怒りのリアルバウト。民主主義における納税とは、(自己)申告納税が基本。これは、納税者の権利なのだ。源泉徴収に象徴されるサラリーマン税制は、例外中の例外である。しかし、日本では、源泉徴収制度がオーソドクシーを獲得してしまい、自営業者や農業従事者の申告納税に、税制度の脱法者というような偏見が、いつの間にか植え付けられてきた。――翻って、消費税だ。消費税の間接税たるゆえんは、納税義務者(事業者)と担税者(消費者)が、一致していないことにある。しかし、消費税分を商品の価格に転嫁できない状況(デフレ不況!)であるとき、実質的に納税義務者と担税者が一致してしまう直接税的な様相を帯びてしまう。近年では、税金の新規滞納額の四割超が消費税である。事業者、とくにコストダウンやデフレ競争に苛まれる中小規模の自営業者に、消費税の悪魔的側面がもろに覆いかぶさってくるのだ。このような状況にもかかわらず、いわゆる“益税”キャンペーンが浸透し、零細自営業者は、ますます追い詰められる。……さらに、正社員に支払う給与は、「仕入れ税額控除」の対象にならないが、派遣会社から労働力を「仕入れ」る場合は「仕入れ税額控除」の対象になるので、どういうことになる否なったのかは、以下略。さらに、「輸出戻し税」制度により、大輸出企業は消費税分のコストを下請け・仕入先に負担させることが出来るかたわら、その税額分の還付を受けることが出来て、即ち、法人税減税分を消費税増税で賄うというシナリオは、まさにゴールドプランなのだ。…………中小自営業者を追い詰め、輸出型大企業に恩恵を与える悪魔のプランを、それを推進する財務省や政治家、マスコミを徹底糾弾する、反・税制ファシズムの書。